プロジェクトマネジメントにおけるアジャイル: ソフトウェア開発を超えて

はじめに

皆様、初めまして。テクノロジー本部プロジェクト推進部のテンジンチョドンと申します。現在はスクラムマスターを担当しています。 トレーニングを通して気づいたことは、アジャイルの哲学はソフトウェア開発に多用されているものの、それだけに限定されるべきではないということです。ほんのいくつかの例を書きましたが、アジャイルは無限の可能性を秘めており、その活用場所に境界線はないと心から信じています。

近年、アジャイルはソフトウェア開発という起源を超え、様々な業界にその影響力を広げています。例えば、アジャイルは建設や医療などの分野にも応用可能であり、有効で、このブログではアジャイルの進化とアジャイルが活用されている分野の例に触れていきます。

アジャイルの進化を理解する

伝統的に、スクラム、カンバンやリーンなどのアジャイル手法は、ソフトウェア開発の代名詞でした。プロジェクト管理に対する反復的で漸進的なアプローチは、従来のウォーターフォール手法の限界に対する解決策を提供しました。そして、その成功により、ソフトウェアの世界以外でも採用されるようになりました。

多様な業界におけるアジャイル原則

アジャイルの原則は、ソフトウェア開発およびプロジェクト管理において効果的なアプローチを提供する指針です。主な原則には、顧客との継続的な協力、変化への柔軟な対応、動くプロダクトの早期かつ頻繁な提供、協力とコミュニケーションの強化、および自己組織化されたチームのサポートが含まれます。アジャイルは、迅速な変化への対応と価値提供の最大化を重視しています。

マーケティング

マーケティングでは、アジャイルの柔軟性によって、変化する市場力学にチームが迅速に適応できるようになります。アジャイルの基本原則に従い、反復的なキャンペーンを行うことで、継続的な改善、市場の変化への迅速な対応、顧客エンゲージメントの向上が可能になります。

ケーススタディをご紹介します

ケーススタディ:SEOエージェンシー、スプリントでさらなる価値を提供

  • 会社: SiteStrategics - インディアナポリス、SEOエージェンシー
  • スポークスパーソン: ジェイソン・フレッチャー
  • ケーススタディ概要: 生産性を妨げるプロセスに不満を抱いていたこのSEOエージェンシーは、最近アジャイル手法を取り入れ、業務を効果的に管理しています。彼らは2週間のスプリントを利用し、キャンペーンを継続的に改善し、異なるチャネルへの支出を調整しています。同時に、スプリントプランニングを通じて従業員の作業状況を把握し、仕事の完了予測をクライアントにより正確に提供できるようにしています。そして、スプリント終了時には、「アジャイル・スプリントを振り返り、約束した全ての項目が完了したリストを顧客に示すだけで良いのです」。
  • 最もエキサイティングな収穫: 従業員を忙しくさせることと、クライアントと従業員の双方が幸せになるための高品質な仕事のバランス。
  • Source: Agile Marketing Examples & Case Studies (agilesherpas.com)

建設

アジャイルは建設でも広く使われていますが、すべての工程で使われているわけではありません。 建設プロジェクトのライフサイクルは、通常、以下です。:

  1. 設計
  2. 建設前
  3. 調達
  4. 建設
  5. 建設後

また、通常、設計段階を開始する前に、プロジェクトの要件を収集するなど、より短い概念化の段階がこのステップでアジャイルに導入されています。

アジャイルが建設業に適用される際のメリット

アジャイルが適用されるのは、まだ大まかな工事が始まっていないこの(設計・建設前)段階がほとんどです。そこでは、アジャイル建設チームの焦点は、反復的な作業プロセスを作成し、変化に適応しながら頻繁に価値を提供することです。スケッチや現場計画などを通じて、最初の顧客からのフィードバックをできるだけ早く収集し、要件が適切に伝わったことを確認することを目指します。これにより、プロセスの早い段階で変更に対応することができ、建設のような業界では、四番目のステップ「建設」の後で手直しをするよりもずっと安上がりです。

建設業のアジャイルのメリット

  1. 顧客とエンドユーザーにより適合したプロジェクト
  2. コスト遅延のリスクを抑えたプロジェクト
  3. チームの自律性が高まるため、モチベーションが向上
  4. 実際の作業状況や障害点の把握が容易になる
  5. 主担当を超えた幅広い貢献

これらのメリットにより、建設業界ではアジャイル手法が広く受け入れられ、プロジェクトの成功に寄与しています。

ケーススタディをご紹介します

ケーススタディ:建設業界におけるリーン製品開発とアジャイルプロジェクトマネジメント

  • 会社: 建設企業
  • ケーススタディ概要: 建設業界、特に設計段階においては、リーンプロジェクトデリバリー(LPD)とアジャイルプロジェクトマネジメント(APM)の実践がまだ広く普及していません。この採用の限定性は、業界の進歩を遅らせている要因であり、設計における効率性、生産性、コラボレーションの向上が制約されています。
  • 解決アプローチ: 統合プロジェクト・デリバリーや協業契約など、アジャイルの原則を取り入れ、協働文化を育てるための協働契約が導入されました。設計プロセスにはリーン原則も導入され、非付加価値活動、ボトルネック、プロセスの非効率性を特定するためのリーン思考が奨励されました。
  • Source: Agile Case Studies: Examples Across Various Industries (knowledgehut.com)

医薬品

医薬品は、厳しく規制された特殊な業界として知られています。厳しい品質要件とプロセス、そして長くてコスト集約的な医薬品開発プロセスが組み合わさると、アジャイルの方法論や原則とはまったく相容れないように聞こえるかもしれません。それでも、製薬業界におけるアジャイルは増加傾向にあります。

医療におけるアジャイルソフトウェア開発における研究文献作成のダイナミクス

医療におけるアジャイルソフトウェア開発における研究文献作成のダイナミクス
Source:Kokol, P. (2022) "Agile software development in Healthcare: A synthetic scoping review," MDPI. Available at: https://www.mdpi.com/2076-3417/12/19/9462 (Accessed: 08 February 2024).

製薬業界におけるアジャイル手法の適用

患者との直接的な関係の欠如のような課題によって、製薬会社は臨床データに頼り、顧客の期待やニーズに気づかないまま、片目をつぶっていました。このような制約やその他の制約をうまく克服するために、製薬企業はアジャイル手法に目を向けています。その目的は、実験、顧客重視、コラボレーションを好む業務進化をサポートすることです。

製薬会社は、以下のような特定のアジャイル方法論に従っています。

  1. プロセスの俊敏性の向上
  2. 医薬品開発の加速
  3. 機能横断的なチームコラボレーション
  4. 積極的な顧客とのコラボレーション

Source: Karolina Grabowska from Pexels/https://www.canva.com/

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ケーススタディ:アラガン社におけるアジャイル導入

  • 会社: アラガン社
  • ケーススタディ概要: アラガン社のボトックスは、10年以上にわたりしわ治療において大きな成功を収めています。アラガン社は3つのベンチャー企業の設立を始動しました。これらの企業は、毎日のスタンドアップミーティング、スプリント、部門横断のチームなど、アジャイルな手法を中心に構築されています。
  • 変化の効果:

    • 副資材(パッケージング、ラベリング、テスターなど)のレビュー時間が数週間から数日、場合によっては数時間に大幅に短縮されました。
    • レビューアは自分の順番を待つのではなく、同時に取り組むことができます。
    • 従業員からは好評を得ており、「以前の仕事のやり方には絶対に戻りたくない」との声もあります。
  • Source: DDMRP in the BioTech and Pharma Industry: Case Study on Allergan (patrickrigoni.ch)

最後に

アジャイルの進化は、ソフトウェア中心のルーツから、多目的なプロジェクト管理アプローチへと変化し、多様な業界の複雑なプロジェクトに対するチームの取り組み方に革命をもたらしました。適応性、コラボレーション、継続的改善というアジャイルの基本原則は、ソフトウェア開発の領域を超えて、非常に貴重であることが証明されています。

今日のダイナミックなビジネス環境において、アジャイル手法を取り入れることは競争力を高め、チームが不確実性を乗り越え、変化に迅速に対応し、卓越した成果を出すことを可能にします。

参考文献

Image Credit

  • Karolina Grabowska from Pexels
  • Source: Canva