インセプションデッキとその重要性について

はじめに

こんにちは、気象サービスのコッチャンと申します。

2020年11月から9か月にわたりアジャイルトレーニングに参加しました。アジャイルやスクラムについて多くのことを学ぶことができ、日々の仕事の中で実践するようになりました。プロダクトオーナー(PO)チームの一員として、トレーニングの中で学んだインセプションデッキについての重要性をついて書きたいと思います。

立ち上げにおけるインセプションデッキ

エムティーアイではアジャイル開発プロセスを4つのシンプルなフェーズに分けています。「立ち上げ」「スプリント0」「開発スプリント」「リリーススプリント」です。最初のフェーズである「立ち上げ」には、インセプションデッキ、ユーザーストーリーマッピング、チームビルディングなどの重要なタスクがあります。これらのタスクは、新しいプロジェクトを始める際に必要なものです。今回の記事では、最初のタスクである「インセプションデッキ」に焦点を当てたいと思います。

インセプションデッキとは一体何なのか?

アジャイル開発で使われるツールで、プロジェクトの全体像(背景、目的、スコープ、優先順位など)をわかりやすく示した資料です。10個のタフな質問で構成されています。

プロジェクトの最初の段階では、自分もチームも同じ考えを持っているように見えますが、実際には認識がずれていることが多いです。調整を後回しにすると、新しいプロジェクトの進行を遅らせたり、停止させたりすることになります。

f:id:mti-techblog-writer:20210826102529p:plain

そのため、プロジェクトの開始時に認識合わせをしたり、プロジェクト途中でゴールとのずれがないかどうか確認する際に、インセプションデッキが使われます。プロジェクト進行中でもインセプションデッキは更新され続けます。

10の質問とその目標

これらの質問は、調整期待のすり合わせという2つの目的のために行われます。

調整とは、「なぜここにいるのか」「何をしようとしているのか」「どうやってそこにたどり着くのか」について、自分と他の人が共通認識を持てていることを確認することです。

一方、期待のすり合わせとは、このプロジェクトを成功させるために必要なことを、チームやステークホルダーに明確に伝えることです。取り組みのルールを定義するのです。

このような会話を早い段階で行い、お客様に最高のサービスを提供するために必要なものを確認しなければなりません。思い込みは禁物です。明示的に質問してください。

f:id:mti-techblog-writer:20210824103351p:plain

インセプションデッキ – 2部制

インセプションデッキは、2つのパートで構成されています。

前半は「プロジェクトの全体像」について、主にPOが説明します。「なぜ作るのか」と「何を作るのか」という視点でステークホルダーが同じ方向を向くようにします。後半は 「実現方法」について、開発チームが説明します。前半で説明した内容に対するソリューションを提案します。

言ってみれば、前半ではWhyとWhatに、後半ではHowにフォーカスしていることになります。前半が終わったあと、開発チームが持ち帰って検討することになるため、前半と後半は間を空けて実施することになります。

[インセプションデッキの前半]

I. 我々はなぜここにいるのか?

そもそも、なぜその製品を作るのかがわからなければ、優れた製品を作ることはできません。理由を問うことで、あなたとチームは、実行中に賢明な判断を下すために必要な文脈を得ることができます。プロジェクトの一番の原動力を知り、理解することで、リリース時に必然的に発生するバランスの取れたトレードオフを行いやすくなります。理由を知らなければ、それはできません。

II. エレベーターピッチ

どのようなお客様がこの製品の恩恵を受けるのか?競合他社との違いは何か?この製品の製品カテゴリーは何か?このような質問に答えるために30秒程度で説明できるシンプルなスライドにまとめる必要があります。製品が提供する価値と差別化が表現されます。

f:id:mti-techblog-writer:20210820150432p:plain

III. パッケージデザイン

製品の広告を決めます。キャッチフレーズとクールなイメージを考えましょう。凝ったものや複雑なものを考える必要はありません。自分に問いかけてみてください。

  • 人々がこの商品を購入する理由のトップ3は何か?
  • そして、この商品の精神を表すスローガンがあるとしたら、それは何か?

IV. やらないことリスト

「やらないことリスト」では、このプロジェクトでは何をしないかを決めます。何を外すのかを明確にすることは非常に重要です。これにより、チームはSCOPE INのものに集中し、SCOPE OUTのものはすべて無視することで、前もって多くの無駄を省くことができます。すべてのハイレベルなユーザーストーリーは、このSCOPE INの欄から作られます。

また、範囲内であっても、何らかの理由(たいていは時間とお金)で範囲外になっているものがたくさんあることも珍しくありません。これらを後回しにするよりも、今解決した方が良いです。

これはまさに「最重要課題」のスコープ・エクササイズです。ここで言っていることは 「このプロジェクトの一部として、これらの最重要タスクを動かせば、問題ない 」ということです。

f:id:mti-techblog-writer:20210820150457p:plain

V. ご近所さんを探せ

このエクササイズは、誰と会って関係を築きたいかを、あなたとチームが前もって考えておくためのものです。ここで洗い出したステークホルダーと頻繁にコミュニケーションを取り、プロジェクトを円滑に進めるようにします。また、このプロジェクトコミュニティにおける中心のチーム(スクラムチーム)はどのメンバーで構成されているかもはっきりさせます。

[インセプションデッキの後半]

VI. 解決案を描く

現在のシステムのアーキテクチャ図と実装方法を描きます。もし、特定のツールやアーキテクチャを使ってこのプロジェクトの課題を解決しようと考えているのであれば、前もってチームに伝えておいた方がいいです。アーキテクチャ図にはリスクが潜んでいるところも明示するといいでしょう。

VII. 夜も眠れない問題

我々のプロジェクトには、様々な問題があります。対処できるものもあれば、対処できないものもあります。心配する価値のあるリスクとそうでないリスクを確実に識別することを目的としています。これは、プロジェクトが始まる前に、すべてのリスクや問題点を指摘し、このプロジェクトを成功させるために解決に必要なものを要求するチャンスです。

f:id:mti-techblog-writer:20210820150514p:plain

VIII. 期間を見極める

システム開発の大まかな期限を決めます。「このプロジェクトはどのくらいの規模なのか」という問いに答えるためのものです。このプロジェクトに何日かかるのか、前もって正確に言うことはできませんので確約するものではありません。しかし、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月のいずれかであることは言えます。

IX. 何を諦めるのか?

すべてのプロジェクトには、Q(品質)、C(予算)、D(時間)、S(スコープ)といった要素があります。これらのうち、どれが最も重要で、どれがフレキシブルに対応できるかを事前に知っておく必要があります。いざというときに、スコープに余裕があるのか、それとも期日に余裕があるのかを知っておくためにも、前もってこの会話をしておく必要があります。QCDSそれぞれの要求レベルがMaxということはありえないです。必ず優先順位をつけておく必要があります。

もうひとつは、このプロジェクトを飛躍的に発展させるものは何か、ということです。それは使いやすさ?シンプルさ?スピード?柔軟性?安全性?それらを書き出し、スタートする前に全員の頭の中にあることを確認します。このトレードオフスライダーはプロジェクト期間中にあなたの道標となります。

f:id:mti-techblog-writer:20210824103823p:plain

X. 何がどれだけ必要なのか?

このエクササイズでは、すべてのステークホルダーの頭の中にある2つの質問、つまり「どれくらいの時間がかかるのか」「どれくらいの費用がかかるのか」について考えます。必要なスタッフ、お金、時間をまとめてください。可能であれば、最終的な意思決定者についても記述した方がいいです。

まとめ

プロジェクトを開始するにあたり、インセプションデッキを作成することは「立ち上げ」段階の重要なタスクです。メンバーそれぞれが独自の考えを持っていますが、プロジェクトの方向性については全員のベクトルを合わせることが必要があります。

これにより、チームはこのプロジェクトの目標、希望、要求、実施すべきことを理解し、プロジェクトを開始する前にプロジェクト計画を調整、改善する機会を得て、後の無駄な時間を減らすことができます。

アジャイルトレーニングを通して、企画面だけでなく開発面でもアジャイルについて多くのことを学ぶことができました。そのおかげで、プロセスへの理解を深め、仕事に活用し始めています。今では、インセプションデッキを作り、チーム全員が共通認識を持てていることを確認できています。

画像出典、参考