改善に向けたレトロスペクティブ  ~社内アジャイルコーチからの教え Part3~

こんにちは。プロジェクト推進部に所属している片山です。 前回に引き続き、アジャイルトレーニングの内容をまとめていきます。

前回の内容はこちら

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突然ですが、みなさんは普段どんな振り返りをしていますか?
プロジェクトの区切りで振り返ったり、スクラムで開発している方はスプリントごとにイベントとして振り返り(レトロスペクティブ)をやったりしているかと思います。 しかし、振り返りは実施したものの、次にうまく活用しきれていない、ベロシティが思ったよりも上がらない、などと感じている方もいるのではないでしょうか。

今回はそんな振り返り(特にスクラムのレトロスペクティブ)について、トレーニングで学んだことを書いていきます。

なぜ振り返りをするのか?

一般的に振り返りとは、自分が目標達成のために行ったことを客観的に捉え、次に向けて改善点を洗い出し、アクションを決めることです。アジャイル開発では振り返りを定期的に行い、仕事のやり方を見直すことが大切であるとしています。(アジャイル開発で大切なマインドセットについては前回の記事に書いていますので、合わせて読んでいただければと思います)

振り返りを定期的に行うことで、開発の進め方をチームに合った形に最適化することができ、生産性を上げて作業を進められるようになります。 しかし、スクラムを導入して定期的にレトロスペクティブを行っていても、なかなか生産性が上がらない、なんて課題を感じている方は多いのではないでしょうか。

そこで次の章から、レトロスペクティブを実施する際の目的・ポイントについて考えながら、具体的にどうやってレトロスペクティブを行うべきかについてまとめていきます。

レトロスペクティブの目的

スクラムでは、プロセスを支える重要な観点として、透明性・検査・適応の3本柱が定義されています。レトロスペクティブは特に仕事の進め方(プロセス)に対して、検査・適応を行うイベントです。具体的には、今スプリントにおける進め方がどうだったかを検査し、うまくいった点・いかなかった点について整理、行かなかった点について改善するためのアクションを設定し、適応していくことです。

上記を踏まえた上で、レトロスペクティブで重要なのは、

  • 継続的な改善を行う
  • プロセス思考で課題を上げる

の2つです。

継続的な改善を行う

前回の記事でも紹介したように、アジャイル宣言の背後にある原則で、

チームがもっと効率を高めることができるかを定期的に振り返り、それに基づいて自分たちのやり方を最適に調整します。

と書かれているように、定期的に振り返る機会を作り、改善していくことが重要です。改善は1回で終わるのではなく、スプリントを繰り返していく中で、定期的かつ継続的に改善していく必要があるのです。
より良くする・生産性を上げていくために、レトロスペクティブという定期的な振り返りの場を活かし、継続的な改善を目指しましょう。

プロセスの課題・改善策を考える

2017年版のスクラムガイドには、スプリントバックログの項目に以下のように書かれています。

継続的改善を確実なものとするために、前回のレトロスペクティブで特定した優先順位の高いプロセスの改善策を少なくとも1 つは含めておく。

上記からわかるように、レトロスペクティブではなんでもかんでも振り返る場として設定するのではなく、プロセスの課題を考え、改善策を設定する必要があることがわかります。
レトロスペクティブではプロセスに注目して課題、改善策を考えましょう。

2020年版では、上記文言は削除されていますが、指示的な部分を削除する上で消えてしまっただけで、プロセス思考で課題を考えることの重要性は変わっていないと考えています。

レトロスペクティブの進め方

KPTをはじめとした具体的な手法については知っている方も多いかと思いますが、レトロスペクティブにおいて踏むべきステップを理解しておかなければ、どの手法を用いたとしても適切な効果を得ることは難しくなります。
そこで、まずレトロスペクティブで踏むべきステップについて、まとめます。

レトロスペクティブで踏むべきステップは以下の5つです。

  1. 場を設定する
  2. データを収集する
  3. アイデアを出す
  4. 何をするべきか決定する
  5. レトロスペクティブを終了する

ここでポイントとなるのが、2つ目のステップ(データを収集する)です。振り返りを成功させるためには、客観的な情報(ベロシティがどう変化したかなど)や、スプリント期間中にどんなことがあったかを思い出した上で、振り返る必要があります。必要な情報を集めた上で進めることで、チームのメンバー全員で共通の理解をしたり、様々な課題に気付いたりことができます。チームとして改善していくためには、全員が納得して課題、改善策を決めていくことが重要なため、この情報収集はとても大切です。

また、4つ目のステップ(何をするべきか決定する)も大切なポイントの1つです。ディスカッションの内容をもとに、具体的なアクションまで決めなければ、原因は共有できても実際に改善していくことはできません。アイデアを出す段階で終わりにしていませんか?実際にどうアクションするかまで決めなければ、改善は進まないのです。そのためには、アイデア出しででた内容に対し、優先順位をつけ、どれから取り組むかをきっちり決めることが重要なのです。

レトロスペクティブの具体的な手法

レトロスペクティブで踏むべきステップとポイントがわかったところで、次に代表的なレトロスペクティブの手法4つの手法を紹介します。チームの状態、やりたいことによって適切な手法は変わってくるので、チーム・状況に合った手法をいろいろと試してみてください。

KPT

Keep:よかったこと・継続すること
Problem:わるかったこと・問題点
Try:取り組むこと
について話し合う手法です。一番主流な振り返り方法であり、多くの場合にうまく適用できる手法なので、迷ったらまずはKPTをやってみましょう。

参考: 最強の振り返りメソッド「KPT法」で、失敗を反省するどころか、長所も希望も見つかった話 - STUDY HACKER(スタディーハッカー)|社会人の勉強法&英語学習

4Ls

Liked: 何が良かったか?何を気に入ったか?
Learned: 何を学んだか?(学び・教訓)
Lacked: 何が足りなかったか?
Longed for: 何を推進したいか?(今後の期待・望み)
の4つにアイデアを分類する手法です。学びにフォーカスしやすい手法で、学習意欲が高いチームに向いてる振り返りの方法です。

参考 : Always improve your next project by running a 4Ls Retrospective | Nulab

FDL

Fun:楽しかったこと
Done:できたこと
Learn:学べたこと
についてフォーカスして振り返る手法です。通常の振り返りと異なり、Funが含まれているため、ポジティブなことにフォーカスした議論をすることができます。楽しくしたい、雰囲気を良くしたい場合には盛り上がりやすいです。

参考: ファン・ダン・ラーン(FDL)ふりかえりボード - Qiita

SSC

Start:新しく始めること
Stop:やめること
Continue:継続して続けていくこと
について上げていき、振り返る手法です。個人・組織関係なく、今後のアクションプランを考える上で有効です。

参考: Start-Stop-Continue Retrospective - Scrum tips

最後に

色々と書いてきましたが、振り返りで重要なことは、

  • 改善点が多すぎて難しそうなことでも1つずつ解消していくこと
  • 現状に満足しないこと

です。スクラムをとりいれ始めた頃はうまくできないことも多く、どうすればいいのかわからないことも多いかと思いますが、最初からうまくいかないことは当たり前です。1つずつでも課題を解消していく+改善したことを実感することで、チームは良くなっていくので途中で諦めないことが大切です。
また、スクラムになれたチームでは現状に満足して振り返りがおろそかになることもあるかと思います。いい状態であることできっと今よりもできることは増えているはずなので、より価値が生み出せることを意識し、振り返りを活用しましょう!